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2012年8月13日月曜日

不思議な経験

人は死ぬ直前、走馬灯のように人生の場面場面が脳裏に浮かぶ、という。もっとも、誰もそんな経験は出来ないので、都市伝説かもしれない。

私は、子供から高校あたりまでの記憶が殆どない。通った学校の名前は覚えているが、担任の先生の名前とか、同級生の名前など、まるで覚えていない。高校の同窓会には入っているので、会報は毎年もらっているが、読んでいて懐かしさを覚えたことがない。生まれた町への郷愁も全くない。記憶がないのは、初期のアルツハイマーなのか、なんだろう、と思っていたが、あるきっかけで、高校自体のことを次から次へと思い出すことになり、無理やり忘れようとしていたのかもしれないと思うに至った。

昨日、家の近所で開かれた音楽会へ出かけた。痛み止めを大量に飲んでいるため、何とか外出は出来るが、痛みは完全になくなった訳ではない。大腿骨に転移した癌が神経を圧迫しているのが痛みの原因と思われるため、足が麻痺しており、上手く歩けない。階段の登り降りが難行で、エレベーターを専ら使っている。エスカレーターは動く速度が歩く早さよりも早過ぎるため、怖い。ということで、家から5分のところにあるコンサート会場へ、20分以上かけてよろよろとぼとぼ歩いていった。

演奏会での曲目の一つ、ショスタコービッチの交響曲5番が始まると、唐突に頭がぐるぐると回転し出し、高校時代のいろいろなことが突如思い出されてきた。高校に音楽部を作ったこと、人が集まらず大失敗だったこと、学校が遠くて通学が大変だったこと、一部のクラスメートと仲たがいし口をきかなくなったこと、成績が下がり続けたこと、教室のストーブ(石炭ストーブだった)を囲んで暖を取っていたこと、高校では紛争があり大変だったこと、高崎まで毎月音楽会に通い、帰りが遅くなったことなど、ランダムに、曲とともに思い出されて来た。そういえば、この曲を聞くのは、高校以来だったような。

どうも高校時代の色々な記憶とこの曲が不可分の関係にあるらしく、聞くと反射的に様々なことが思い出されるようだ。思い出の引き出しの鍵が、この曲になっているらしい。

実は高校時代はあまりいい思い出はない。進学校で、男子校で、楽しい学校ではなかった。友達と最近会うことは殆どない。年賀状のやり取り程度。同級生の殆どは郷里の町に住んでいるから、偶然に出会う機会もあまりない。

何故か、封印していた思い出が、曲とともに開封されてしまったようだ。それこそ走馬灯のように、次から次へと思い出される。変な経験。演奏はとても良く、大成功の演奏会だったのだけれども、もうこの曲を聴きに出かけることはもう多分ないだろうな、と思った次第。

もしかして、中学校や小学校についても、何かの曲を聞くと、色々思い出せるのだろうか。思い出したくはないけれど。




6 件のコメント:

  1. まさぞう様
    たまに投稿している木魚です。
    こんな偶然があるのでしょうか。私も昨日ショスタコービッチの5番が演奏された音楽会場から徒歩5分の集合住宅に住んでいます。
    まさぞうさんが区役所のマロニエの写真を掲載された時にご近所だと気がついてしかるべきでした。

    駅付近をこの暑い最中に皮の手袋と鳥打ち帽をかぶってよろめきながら歩いている老人を見かけたらそれが私です。駅から送迎バスが出ている温泉で、髪の毛が抜け落ちたムーンフェイスの老人が膝から下を冷水と温水に交互に浸けているを見かけたらそれが私です。

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  2. 木魚さま

    ありがとうございます。ご近所だったとは。

    駅からバスで行く温泉には昔は良く行きました。あそこは効き目が強すぎるのか、1時間もいると、体がぐったりしてしまい、入浴後が辛いため、最近行っていません。

    家の窓から、最近できた病院がとても良く見えます。あそこで死ねたら便利で良いかななどと思っています。

    私は、この三週間ほど全く外出できていません。歩くことがこれほど大変とは思いませんでした。私はオレンジのキャップに七分丈のパンツ姿が多いと思います。道で出会ったらよろしくお願いします。

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  3. まさぞう 様

    ご近所の音楽会に行かれたことを聞いて、喜ばしく思います。その会場に行かれるまでの歩行の大変さは、傍にいなくてもよくわかりますが、失礼ないいか言い方かもしれませんが、よく頑張りましたネ。
     他の人の歩く速度の5倍かかろうが、貴方が自分の足で少しずつでも歩けたこと外出出来たことうれしいです。

     家の中で、御一人でいらっしゃる姿を想像したら、いつも心配でいたたまれなかったです。

     また、過去を懐かしく思われる事?は、悪いこととは思いませんが、もっと先を見てください。これは、貴方にとっては、残酷なことかもしれませんが、ひと月先 そしてこれをクリアー出来たら、また ひと月先を そして命を繋いでください。
     あたらしく出来た病院で死ねたらですって、何を言っているのですか!負の考えは、決して良くありません。ょ。

     私は、女性だから精神論とかに翻弄されているかもしれませんが、その半面、女性だから母親のようにどうしよもできないことでも包み込んであげたいのです。

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  4. 菜々子さま いつもありがとうございます。今の痛みがあまりにも辛いので、つい楽なことを考えてしまいました。

    来週の治験開始まで、生きているのかどうか、あるいは生きていても、癌が制御不能になっているのではないかと不安に感じているこのごろです。

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  5. まきぞう様
    初めてコメントさせていただきます。
    私の父も、今、同じようにがんと戦っています。
    今までの薬は、初めかなり効くのですが、悪性度が高いのか、数ヶ月で上がってしまいます。
    カソデックスで380→16→1→2→16→40→70
    プロステールで70→100
    8月からアビラテロンの治験を受けています。数値は100から一週間で40までさがりました。
    えつ
    1週間ごと数値を見るのですが、100→40→25→26といった所です。
    今週どうなるかハラハラしていますが、アビラテロンは効くと思います。
    まきぞうさんも、早く治験スタートしてほしいです。
    大丈夫です! 絶対効きます! 一緒にがんばりましょう。

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  6. 匿名さま ありがとうございます。お父様、ご心配ですね。アビラテロンが効いて、症状が改善されること、お祈り申しあげます。

    私は一人者なので、医療費や生活費のことで家族に心配をかける必要がないので気楽なのですが、一方で、面倒を見てくれる家族がいないので、痛みで寝返りさえ打てない、起き上がれない、歩けなかったとき(過去数週間がそれでした)、家族がいないことの不安を実感しました。

    一家の大黒柱の人の闘病の悩み、苦しみは大変なものだろうと想像します。大国柱は、愚痴や悩みを言う相手がいませんから。人に言えないご苦労がおありだろうと思います。

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